ベートーベンは神を強く意識していました.
それが彼の偉大な音楽を力強いものにしています.
映画が人々に大きな影響力を持つのはなぜでしょうか?それは,カトリック教徒でさえ人間性を持っており,人間性には音楽,物語,絵画が必要であり,映画はこの三つを兼ね備えているからです.そのため,ハリウッドが20世紀初頭に創業されたとき,神の敵たちはそれを確実に支配しようと素早く行動しました.彼らは映画が人々の心に与える大きな影響を神の友たち以上によく知っていたからです.神の敵たちがハリウッドを造りだしたと言ってもいいでしょう.いずれにせよ,カトリック教の親たちは少なくとも自分の子供がどのような音楽を好むかを知り,どのような音楽を聴いたらいいか指導することがいかに大切かを自覚すべきです.彼らはジャングル音楽を家の中から完全に締め出すべきです.
これは手に負えない難題でしょう.というのも,子供たちは家から一歩外へ出た瞬間から,あらゆるものを飲み込むばかりのジャングル文化,とりわけ仲間に同調しなければならないというジャングル・プレッシャーに出くわすからです.子供たちは自立しなければなりません.親たちは彼らに良い模範を示す必要があり,格調も倫理的価値もない薄っぺらな音楽を聴かせないようにしなければなりません.往々にして悪魔が子供たちの心に入ってくる最初のドアは悪い音楽です.悪い音楽のあとに堕落が続きます.母なる教会はミサで良い音楽を用います.このことから,カトリック教の親たちは子供たちの心の入り口に誰も見張りが立っていないと悪魔が悪い音楽を利用するようになることを理解できるのではないでしょうか.音楽は人々の心にとって独特な言葉であり,その生活に独特な影響を与えます.
昨年(2020年)12月16日はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベンの生誕250周年記念日でした.この日は私たちに良い音楽の価値と重要性を思い起こさせる機会となりました.音楽愛好家の中にはベートーベンの音楽は激しすぎると異を唱え,彼以前の穏やかな時代の作曲家を好む方もいるでしょう.それはそれで結構なことです.もし,ベートーベン以前の作曲家を深く理解するのであれば,自分好みの音楽を子供たちに与えればいいでしょう.だが,ベートーベンの大きな利点はその生涯(1770-1827年)がフランス革命(1789-1794年)と重なっていることです.つまり,彼はアンシャン・レジームすなわち古い生活様式のもとに生まれながらも,成人後の数年を革命時代に生き,晩年をヨーロッパが革命勢力を制御しようとしたウイーン会議(1815年)後に過ごしました.だが,彼自身の音楽と同じように,革命勢力はさほど制御されませんでした.事実,彼らは革命いらい全世界に益々浸透しています.したがって,今日の無数の若者たちはベートーベン以前の音楽に愛着を抱いていません.むしろ彼らはベートーベンの音楽によって自身の心中にあるカオスが掻き立てられると感じています.
だが,ベートーベンの音楽は決してカオスのようなものばかりではありません。彼は生まれつき古い秩序を備え,人格形成期間をとおしてそれを持ち続けました.その古い秩序が彼の力強い音楽心を形成し,激しい感情をコントロールしました.彼の作曲にかける情熱,言い換えればその情熱的な作風がユニークなのはそのためです.大まかに言えば,ベートーベンの円熟期の傑作は彼以前の穏やかな作曲家のどの作品よりも感情を表現しており,彼以降の激しい作曲家のどの作品よりも秩序を表現しています.中世と近代をまたいで生きたシェークスピアが中世の神学と近代の心理学を結びつけることでその世界的な芸術家としての地位を得たと言えるように,ベートーベンの偉大さは大まかに言えば,18世紀の頭脳と19世紀の心を結びつけたからだと言えるでしょう.
ベートーベンは多種の音楽作品を残しました.その中にはオペラ1曲,ミサ曲2曲,ピアノコンチェルト5曲,交響曲9曲,バイオリンソナタ10曲,弦楽四重奏曲17曲,ピアノソナタ32曲が含まれます.このうち最も人気があり広く知られているのは間違いなく9曲の交響曲です.フルオーケストラと発想の自由により彼の持つ類まれな才能がいかんなく発揮されています.不慣れな聞き手には9曲の交響曲はすべて同じように聞こえるかもしれません.だが,それら9曲を知れば知るほど,どの2曲が最も似ているか,あるいは似ていないかを言うのが難しいと感じるようになるでしょう.書き言葉で音楽を表すことはできません.言葉はそれを描写する試みしかできません.そこで,次のエレイソン・コメンツでベートーベンの交響曲を描写したいとおもいます.ヨーロッパの白人男性たちが持つ比類ない文化を朽ち果てさせてはいけません!それは神を内包しているからです.
キリエ・エレイソン(主よ憐れみ給え)
ベートーベンは神を強く意識していました.
それが彼の偉大な音楽を力強いものにしています.
1 喜びの精気が戦場を駆け巡る
音楽がめったに持たぬ武器を与えるように
2 マスターはその羽を精いっぱい広げる
難聴の苦悩から大きな力を引き出しつつ
3 英雄は戦わんと歩を進める
死を迎えるも,
その気迫は高々とそびえる
4 未知の新分野に君臨せんと
情熱,変化,秩序をもって臨む
5 嵐が宇宙の骨組み揺るがす
そして人は勝利を得んと闘わねばならぬ
6 田園での川辺の散策
農夫たちの踊り,嵐,そしてのどかな夢
7 荘重な曲,魂の挽歌
細部,全曲とも高潔なり
8 英雄は高みから地上に降りる
過ぎし日々を律動的な陽気さで偲びつつ
9 運命,宿命,そして天が裂けるのか?
だが,リズム,美しさ,人の喜びはとどまる
リチャード・ウィリアムソン司教
訳注の掲載を続けます.